2016
01.20

体外受精において使われる培養液とはどんなものなのか?

胚培養士が使う仕事道具

体外受精において使われる培養液とはどんなものなのか?

いくら胚培養士の技術が高くても、採卵や精子の洗浄、そして受精卵の培養に使われる培養液の質が悪くては元も子もありません。

培養液とはまさに生きていく環境そのものであり、妊娠に対して多大な影響を及ぼすだけではなく場合によっては回収した卵子や精子、そして受精卵までもその品質を台無しにしてしまう可能性もあるのです。

非常に大切な培養液ですが、残念ながら全てを網羅したこれ1本でOKのようなものはありません。日夜研究を重ねながら、より良いものを作り出しているのです。

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〜培養液の種類〜

●HTF
初期に開発されたヒトのIVF用の培養液です。
女性の卵管液成分を元にして作成されたものであり、含有されている成分は限られているので使いやすく管理しやすいのが特徴です。広く使われていたのですが、もっと胚の発育ステージに応じた培養液を開発しようということで作られたのが、Sequential Mediumです。

●Sequential Medium
胚は発育するにつれて、どんどんエネルギーを欲するようになります。わたしたちも同じですよね。幼少期よりもぐんと成長する思春期のほうが、より多く食事をして栄養分を吸収していますね。逆に、幼児に高カロリー食を与え続けることは、体に良くないことも容易に想像がつきます。

胚も同様であり、小さな初期胚のころは少し、そしてどんどん発育して胚盤胞の状態になるとより多くのエネルギーや栄養分が必要となります。

またそれぞれに欲する栄養分も異なることから、Sequential Mediumは各発育ステージにおける組成が異なっている培養液になります。一般には、受精成立から4-8細胞期までのステージと8細胞期から胚盤胞期までのステージにわけた2種類の培養液をセットで使うことが多いです。

●Embryo Glue®
日本語に直訳すると、「胚の糊」であり、胚移植専用の培養液です。これまでの培養液よりも粘度の高いヒアルロン酸を非常に多く含有しており、胚の子宮内膜への接着効果や物理的外圧から守るという効果が期待されています。

比較的新しい培養液ですし、日本国内での使用経験はまだ少ないのでこれからさらなる研究が必要となりますが、中には着床率が上がったという事例もあります。

培養液は日夜進歩しており、現在では多くの種類が販売されています。しかしながら、冒頭でも述べたように全ての症例に合う万能培養液というものは存在しません。これがまさに不妊治療がオーダーメイドと言われるところでもあり、胚培養士の活躍どころでもあるのです。

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