胚培養士の仕事とは?
生殖補助医療(Assisted Reproductive Technology : ART)に携わる様々な技術者の中でも、胚培養士に特化した情報を提供していきます。患者として治療を受けていく過程ではなかなか出会えない胚培養士ですが、不妊治療においては非常に重要な役割を果たしているのです。
●胚培養士とは一体何者なのか?
胚培養士とは生殖補助医療胚培養士やエンブリオロジストとも呼ばれ、日本の不妊治療をここまで発展させた影の功労者といっても過言ではありません。
その仕事内容は多岐に渡り、体外授精や顕微授精だけではなく、採取した精液の検査・洗浄、精子、受精卵(胚)、卵子の凍結保存なども行っています。
こういった作業は医師や看護師が行っていると思われがちですが、実際には殆どの施設で、特化した技術をもつ胚培養士が担っているのです。
患者さんによっては、卵子や胚の取り扱いについて医師免許を持たない人たちがすることに不安を感じるかもしれません。しかし、不妊治療患者が増えつつある現在、煩雑で複雑化している胚の培養など全ての工程を医師が担うことはほぼ不可能です。
そして何より、体外受精や顕微受精には高度な技術が要求されます。厳しい研修を受け、それらに特化した技術や知識を持つ胚培養士が関わることで、妊娠率を向上させることができるのです。
冒頭に、胚培養士には生殖補助医療胚培養士とエンブリオロジスト、二つの呼び名があることをご紹介しました。
気になる二つの違いですが、これは資格を認定している学会が異なることに由来します。従って、両者の業務内容に大きな差はありませんが、主催している学会が別になりますので統合されることなくどちらも存在しているのです。
●どのような人たちが活躍しているの?
一口に胚培養士といっても、クリニックでこれらの業務に従事している医療技術者が全員、資格を持っているとは限りません。
長い間、胚に携わっていながら資格を持たずにいる方も多くいるのです。
どうして胚培養士の資格を持った人たちばかりではないのでしょうか。
それは、この資格が公的な国家資格ではなく、学会が認定しているものになるからです。よって、適した大学や専門学校を卒業することで受験資格が与えられる類のものではなく、指定された各医療機関にて一定期間、業務に従事して知識や技術を身につけた上で、受験することになります。
そういった意味では、スキルアップのために取得するという意味合いが強いかもしれませんね。
かといって、全く畑違いの人たちが胚培養士を目指すわけではありません。
現在活躍している人たちは、農学系、理学系、医学系の大学で学んだのちに医療機関で経験を積んだ方ばかりです。
また、すでに臨床検査技師として働きながら胚を扱うことも珍しくありません。
●胚培養士にとって大切なこと
もちろん、安定した技術はARTを成功させるためにとても大切なことです。
特に胚培養士は直接、胚や精子を扱うことになるので、慎重さが要求されます。技術によって治療成績が大きく左右されるからです。
しかし、胚培養士に要求されるのは高い技術だけではありません。
人の命を扱うのですから、当然、高い倫理観も持ち合わせている必要があります。
まさに命を生み出す、その最前線にいるのが胚培養士なのです。