01.21
胚培養士の仕事~精液検査・精子調整・精子洗浄ってどんなことを行うの?
今回から数回に渡って、実際に胚培養士が不妊治療で手がけている仕事をご紹介します。
男性から採取した精液には、純粋に精子だけが含まれるわけではありません。精子に加えて、不純物や不良精子、死滅した精子なども一緒に含まれています。
これらは通常であれば、射精されてから受精に至る過程の中で淘汰されていくのですが、人工授精や顕微受精においてはその過程が省かれることになります。
従って、着床率や妊娠率を少しでも向上させるため、予め精液の中から質の良い精子をピックアップする精子調整・洗浄が必要となるのです。
●精液採取の方法とは?
これまで不妊症の原因は女性側にあると思われていましたが、今では、男女でその割合はほぼ変わらないことがわかっています。従って、不妊治療を始める際には女性側の検査だけではなく、男性側の検査も受けることでより適切な治療が受けられるといえます。
とはいえ、女性に比べて男性側に原因があった場合、より精神的ショックを受けてしまうもの。女性が強引にクリニックへと連れて行くという行為はもってのほかです。相手の気持ちを尊重しながら、男性自身が受診しようと決意することが一番理想的ですよね。
さて話は戻りますが、男性側の検査にとって必須事項となるのが精液の回収です。一般的にはクリニック内に採精室がありますので、こちらで採取することになります。場合によってはパートナーが一緒に手伝うことも可能です。
また、クリニックで行うことに抵抗を感じる場合は、自宅で採取してクリニックに持参することも可能です。この場合、採取してからあまり時間が経過しないうちに検査をする必要があり、クリニックごとにある程度制限時間を設けていることが多いです。
●精液検査はどんなことを検査するの?
採取した精子は様々な角度から検査を行うことになります。
まず、採取したての精液はゲル状になっていますので、室温で30分ほど静置してサラサラの状態になると、いよいよ検査開始となります。
まずは、外観と量のチェックから行います。
その後は、精子濃度や運動率のチェックに取り掛かります。実際に顕微鏡を用いて、その数をカウントし、運動性も確認していくのです。
ここで良好な結果が得られなかった場合は、遠心分離機にかけてさらに顕微鏡で調べることもあります。また、場合によっては精子の奇形がないか、精子が存在していても生きた状態で活動できているか、そのような点についても確認していきます。
●精子調整はどのように行われるの?
より質のよい精子を回収するために行われるのが精子調整です。代表的な方法として、密度勾配遠心法とswim-up法が知られています。
・密度勾配遠心法
生存している形態の良い精子は、死滅している精子や奇形の精子よりも密度が高いことを利用した方法です。不純物からの分離も目的としています。
具体的な方法は、パーコールという液を入れた試験管の上に、精液を注いで遠心分離するというものです。より密度の高い精子のほうがパーコールの下部に集まります。密度が高い精子ほど、運動能、形態が良いので、このことを利用して、良質な精子が分離できるのです。
・swim-up法
もうひとつの調整方法であるswim-up法は、さらに高い運動能力をもつ精子を回収する目的で、一般には、密度勾配遠心法で得られた良質な精子を用います。
具体的には、試験管の底に密度勾配遠心法で得た精子を入れ、その上に培養液をのせて、培養液の上方へと泳いできた精子を回収する方法です。こうすることで非常に運動能の高い精子のみを回収することが可能になります。
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