2020
05.15

不妊治療とAI

胚培養士が使う仕事道具

少子高齢化が叫ばれて久しく経ち、それに伴った労働人口の減少が目立ち始めるようになってきました。一方で、全世界的に技術革新の進歩はめざましく、その中でも特に人工知能、AIを用いた技術が実用化に向けて少しずつ広がってきています。AIを活用するメリットは様々ですが、これまでの仕事を少人数で行うことができるだけではなく、仕事を効率化できるという点で画期的な手法だと言われています。

例えば、大手自動車メーカーはAIの機能を用いて、自動運転機能を搭載した自動車を開発していますし、農業の分野やビッグデータの解析でもAIは重宝されています。そして、なんと最近では、不妊治療の分野においてもAIが活躍し始めるようになってきました。

現在、不妊治療においてAIの活用が目覚ましいのは、体外受精や顕微受精を行う際に用いられる精子の選別です。

通常、これらに用いられる精子は採取後のものをそのまま使うのではなく、形態が良く運動性の高いものを選別しているのですが、そのほとんどが胚培養士と呼ばれる専門職の手によって行われています。つまり、人の目によるところが大きいため、胚培養士の技術や経験、知識等によってその精度にばらつきがあるのが実態です。

そこで、AIの出番となるわけですが、経験年数が長く素晴らしい技術を持ち得ている胚培養士が精子を判定する際のデータや専門家による評価などを蓄積して精度を高め、胚培養士が精子を選別する際の手助けとなるような技術が現在、開発されています。

AIの登場によって、経験の浅い胚培養士であっても、熟練の胚培養士と同じような技術を提供することができますし、これまで指摘されていた施設間の技術格差についてもある程度カバーすることができるようになります。

さらに、精子だけではなく受精卵についての情報をディープラーニングさせることで、着床に適した受精卵の判定にも活用されています。タイムラプスインキュベーターと組み合わせて、的確な判断を下していきます。

AIは私たち人間の仕事を奪うと危惧されてはいますが、実は使いようによっては私たちの生活をより豊かにし、これまで解決できなかったような問題を紐解く糸口にもなり得ます。これからも、不妊治療の分野だけではなく、様々な分野でAIの力が発揮されていくことが望まれています。

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