2016
09.02

京野アートクリニック 青野培養室長インタビュー

胚培養士インタビュー

今回は、京野アートクリニックの青野展也 培養部部長にお話を伺いました。仙台と高輪に拠点をもつこちらのクリニックには、多数の培養士の方が在籍していらっしゃいます。そこで、培養士の世界についてだけではなく、マネジメントについても詳しく話していただきました。

それでは、インタビューをどうぞ!

●培養士になったきっかけを教えてください。
元々、この職業については知らなかったのですが、学生時代の先輩が培養士になって、見学させてもらったのがきっかけですね。

今から24年前に培養士として就職した病院で5年間働いた後、実は2年間、外資系の診断薬メーカーで営業マンをしていました。それまで内側の世界にいたので、全く違う外の世界は楽しかったですね。

●再び、培養士になろうと思ったのはどうしてですか?
その頃、ちょうどその会社が合併することになったのですが、合併先の企業があまり自分に合わない会社だったので、別の外資系の会社を受けて内定をもらっていたんです。

でも、たまたま新しく仙台にオープンするクリニックあるということで、私のところに話がまわってきまして。それがきっかけで、また培養士に戻ることになりました。そこのクリニックには、12年在籍していましたね。

●それだけ長くいるとマンネリする部分もあるかと思いますが、それについてはどうですか?
そうですね。私は通常の業務を行いながら、生殖関連の基礎研究を行うために東北大学に通い共同研究も行っていました。
そうこうしているうちに、教授から研究を続けて大学院へ行くことを勧められたので、社会人の修士課程からスタートして博士過程まで進みました。

クリニック受付です。ホテルのような雰囲気で出迎えてくれます。

クリニック受付です。ホテルのような雰囲気で出迎えてくれます。

●京野アートクリニックに移籍したきっかけを教えてください。
営業マンを経験後、12年間同じクリニックで働いていましたが、その後は仙台で新しくオープンするクリニックの立ち上げに携わっています。立ち上げに関しては後輩も一緒に携わっていましたので、軌道に乗ったところで、後輩に任せて転職をしました。
私は管理胚培養士の資格をもっているので、定期的な論文執筆や学会発表の必要があるのですが、そこのクリニックの規模からするとそれを維持するのが難しいという側面もあったからです。

●京野アートクリニックで働いてみてどうでしたか?
規模がすごいことは知っていましたが、京野先生の先見の目がすごいですよね。

だいたい、みなさん先くらいはわかっていると思うのですが、そのもう一歩先をいっていますし、それが殆ど現実になっています。

ここではやろうと思えば、研究でも何でもやれる環境にあります。やる気がある人にとってはいい職場ですし、刺激も相当ありますね。ただ、慌ただしいことは間違いなく、臨床もかなり数がありますけれど。

●こちらのクリニックでは、色々な技術を取り入れられていますよね。先生側から提案される場合、どのような形で進んでいくのでしょうか?
そうですね。無理を承知でやって欲しいということはなく、現実的に可能かどうか?という話から始まりますね。それを受けて、色々と調べたり、研修を受けるなどして目処をつけ、進めていくという感じです。

●マネジメントは大変だと思うのですが、仕事の査定や目標設定などは細かくされていますか?また、気をつけていることがあれば教えてください。
そうですね。培養士は私以外でいうと、仙台が11人、高輪には12人いるので合わせて23人になります。

仙台のほうは、20年の歴史があり体制がしっかりと整っていますので、ほぼ仙台の主任さんにお任せしているのですが、どちらかというと高輪に重きをおいています。オープンしてそんなに経っていないですしね。

オープン当初はコミュニケーションがあまりとれておらず、意見が言いにくい環境だったのですが、今ではだいぶ改善されてきました。

仙台でも高輪でも、できるだけ直接細かい指導は他の方に任せるようにしています。どちらかというと引いて遠目に見ていることが多いですね。そのほうが見えることもあるかなと思っています。また、人に教えることで後輩自体も育っていくことも多いので。

クリニック待合室は、広々としています。

クリニック待合室は、広々としています。

●人によって習得のスピードなど全く違うと思うのですが、やはり個々人に合わせて教育していくのでしょうか?
基本的には、年数によって出来ることの目安がだいたいあるのですが、やはり個人差が出てきますよね。また、人によっても得手不得手があるので、早く進む部分と遅く進むところがあるなど、個人の中でも内容によって進み方がバラバラということもあります。全体的に遅れているという人は、そんなに多くありません。

しかし、本当に不向きな人も中にはいますね。

培養については、大半の人は努力すれば技術は身につきますし、すごくセンスのいい人であれば、それほど努力しなくても身につく人もいます。やはり培養はテクニックなので、手先の器用さは必要になってきます。

大学教育というのは細かい手技やテクニックまではみないので、そういった部分は大学時代の成績表を見てもわからないですしね。

見学に来た方には、もし自分が根っからの不器用だと感じるようなことがあれば、培養士になることをあまりお勧めはしないという話はよくしています。場合によっては、努力をしたにも関わらず、無駄な数年間を過ごすことになるかもしれませんし、結果的にそうなってしまったらもったいないですよね。

自分が器用だと思っている人や、最低限でも普通レベルだと感じていれば向いていると思います。

●いま、京野アートクリニックで一番力を入れていることはなんでしょうか?
病気の方の卵子凍結や卵巣凍結に力を入れています。将来的に病気が治った後、生殖能力を維持するためのものになりますね。かなり先んじている感じもしますが、海外では卵巣凍結も当たり前になってきていますので、日本はむしろ遅れているほうだと思います。

京野先生はそのあたりを危惧されていて、病気の方々の卵子凍結のときも早めに着手されていました。

●記者会見もされていましたが、卵巣凍結は決して利益が出ることではないですよね。
利益も出ないですし、むしろ赤字覚悟だと思います。しかし、生殖医療に携わっている限り、将来的に本人の子供は無理だろうということを見過ごすことはできないと思っています。

●妊娠率を上げるために、こだわっているところはありますか?
仙台と高輪に2箇所クリニックがあるので、以前までは同じことをしていたのですが、最近ではそこを変えて、高輪では別の培養液を使うという試みをしています。

基本的にはある程度、数が取れた方には元々2種類の培養液を使い、半分に分けて培養していました。それは、やはり出荷や税関の過程で止まってしまうこともあるので、リスク回避という面でも培養液は2種類あったほうがいいということがスタートになっています。

今は、仙台と高輪でひとつは同じ種類の培養液を、そしてもうひとつは異なる種類の培養液を使っているのですが、そうすると差が出てきますよね。片方は同じ培養液を使っているので、それを基準に考えると、次の培養液を選ぶときにはもう実証済みの状態になっています。

●今後のビジョンについて教えてください。
まず、着床前スクリーニングは現実的になるだろうと思っています。日本でもかなりワークショップ等が開催されていますし。当院でもここ1,2年で、ワークショップなどに参加して準備をしています。

日本は特に年齢的に高い人が多いので、日本こそ必要な技術だと思いますし、検査をすることで流産の可能性も低下し、貴重な期間を短縮できることは良いことですよね。
日本でも早く倫理的な問題等を解決し、その効果の検証を行ったうえで、海外のように実施できることを期待しております。

培養室です。ここから新しい命が生まれています。

培養室です。ここから新しい命が生まれています。

●最後にメッセージがあればお願いします。
培養士の仕事は、同じ仕事をしているはずなのに、あまりにもクリニックによって技術や方法などの差がありすぎると感じています。他のクリニックで教えることもあるのですが、他の医療職と比べても、本当に井の中の蛙のような状態が多すぎますね。

でも、自分のクリニックしか知らなければそれが当たり前ですし、先輩から教わったことが全てになってしまいます。

そして、さらに問題なのが、そのことを患者さんどころか医師も知らないことも多々あるということです。医師が、自分のクリニックがやっていることを知らないこともありますし、逆に自負していることもあるのですが、聞いてみるとびっくりするような方法であったり、妊娠に結びつかないことをしているケースが未だにありますね。

そのため、最低限の標準化は必要だと思っています。

培養士としての全体的なレベルを上げるためには、国家資格化にし、最低限の方法を知っている人たちが試験を受けて合格するという仕組みが望ましいですね。また、知識を問う試験は大事なのは当然ですが、培養士はそれだけではなく、技術的に通常のメソッドを知っているかも重要です。そこが今は足りない部分ではないでしょうか。

最後に
数多くの培養士を束ねながら、ひとつのクリニックにこだわるのではなく、培養士全体の質の向上を目指していらっしゃるのだと強く感じました。

また、常に不妊治療をより良くするため、新しい試みに挑戦されている姿勢は素晴らしくこれからも最前線を走っていかれるのだろうという印象を受けました。

お忙しい中での取材を受けて頂いたことを感謝致します。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

<関連サイト>
京野アートクリニック(仙台)
http://ivf-kyono.jp

京野アートクリニック(高輪)
http://ivf-kyono.com

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