2021
04.17

ASKAレディースクリニック 今野培養室長インタビュー第二弾

インタビュー

このたびはASKAレディースクリニック(奈良市)の培養室長である今野彰氏にインタビューをさせて頂きました。

昨年からのコロナの影響で不妊治療に関係する患者さんや医療機関も大きな影響を受けました。しかし、不妊治療は時間が重要な治療であり、その中でも色々と考え、行動しなくてはいけないということで、現場のお話をして頂くべく、取材を行いました。

それではご覧ください!

いきなりですが、コロナ禍における不妊治療について教えてください。

最初の頃は、コロナがこんなに状況になるとは思っていませんでした。段々と大変になってきましたので日常生活においても常にマスクをつけること、そして、スタッフが感染したらどうするかという動線を急遽、考えました。

当院では、最初に院内スタッフに感染者が出たら、一旦、卵子凍結・受精卵凍結を行ったうえで培養業務を止めようという話になりました。実際、止めるに当たってどういう動きをしていこうかと、話を進めていましたね。

基本的に、培養室内でのスタッフの接触は濃厚接触者の枠に入るのでは?という厳しい基準でやっていましたので、本当に誰一人感染しないようにと大変でした。今でももちろんそうですが、培養室に誰も感染者を出さない努力、外食の自粛もしかり、本当に息がつまる思いです。

一時期は、スタッフの出勤を二部制にされていましたね。

1回目の緊急事態宣言の時に、そういった体制でやっていました。

少し落ち着いてきたので元の体制に戻したのですが、今年からまた緊急事態宣言が出たことで色々と考えました。しかし、その辺りについては状況を鑑みながら、現在は二部制にはしていません。

感染した患者さんが来られたことはありましたか。

患者さんのコロナ感染例はあったと思います。

看護師がマスクや手洗いを徹底していたこともあり、濃厚接触者というカテゴリーには入らずに、保健所の指導を仰ぎながら対応していました。

当院では、採精室も全て使うごとに消毒していますし、受付のスタッフなどがこまめにアルコール消毒してまわっています。体温もスタッフ全員測っていますし、発熱があれば、スタッフはもちろん、患者さんにも来院は控えていただくようにしています。

4、5月以外は、患者さんの数に大きな影響がなかったように思えますが、いかがでしょうか。

そうですね、あまり影響はなかったです。

トータルで見ると、都市部から患者さんが流入している感じもあります。大阪などで治療するのが嫌だと考える方が、奈良や感染者数が少ないところに移ってきたということもあるのかもしれませんね。

実際、聞く話によると、大阪などでは患者さんの数が減ったとのことでした。

懇親会や親睦会なども控えられているのですね。

基本的には院内での行事は開催していませんし、スタッフ同士でも飲み会をしていません。

昨年は、当院培養スタッフの中に胚培養士資格試験に合格した者もいたので本当はお祝いの会をしたかったのですが、それも全部なくなりました。やはり、飲み会を開くことで、如実にコロナ感染のリスクがありますので、控えていましたね。

コロナになってから、患者さんの意識もかなり変わりましたか。

緊急事態宣言が出る前あたり、つまり、日本生殖医学会が会告を出した頃から当院でも「コロナによってどういう影響が出るのかわからないので、インフォームドコンセントをした上で移植等を決定する」という方針になりました。

日本生殖医学会からの会告を患者さんにお伝えしていましたので、緊急事態宣言の前くらいからは、おそらく胚移植を控える方が多かったと思います。ですが、それが解除になって少し意識が変わってきたのかもしれませんね。胚移植もそれなりに増えていますし、40歳以上の方は後がないということで実際に胚移植は不安だけども踏み切るという方は多いように思います。

孤独感が増し、子供が欲しいと思う方が増えたのでしょうか。

そうですね。

40歳以上の方は感染への不安もあると思うのですが、現在はあまり胚移植をためらうこともしていない印象を受けます。それよりも、妊娠することの方が待ったなしという状況なのだと捉えています。

コロナには感染しないように注意しながら、積極的に胚移植も受けておられると思いますし、助成金の問題もありますよね。コロナ禍において、対象者が限定的に43歳から44歳に延長されたりしたことも、胚移植が減らなくなっている原因かもしれません。

助成金の一年延長や回数制限などの面もありますし、来年から保険適応も始まるようですから、このまましばらくは減らないのではないかと思います。

保険適応についてはどう思われますか。

実際、保険は運用の仕方次第だと思います。

都市部の大きなクリニックで割と値段を高い設定にしているところと、国公立病院の値段はおそらく大きく違いますよね。凍結代一つとっても違いますし、凍結の保管料も異なりますので、そういう状況できちんとした基準が出来るのかどうか気になります。どこまで保険適応するのかまだわかっていないこともありますし、それが決まったからといってもやはり大変な部分が多いですよね。

保険適応部分は低めに設定して、あとは自由診療ということであれば、まだ助成金の方が患者さんにとっていいのではないかとは思います。保険となるとどうしても全国統一の基準を作らないといけないですし、差があるので難しいですよね。

この一年、妊娠率の成績はいかがでしょうか。

妊娠率は例年と大差はないのですが、やはり40歳以上の方が多く来院されています。平均年齢がものすごく上がったというわけではないのですが、緊急事態宣言下においても40歳以上の方は後がないので結構、胚移植されている方多かったのだと思います。一方で、それほどの年齢でない方は、凍結だけをしておくという方が多かったように思います。

元々、日本生殖医学会から、受精卵の結保存という選択肢も提示するようにと通知されていたこともあり、比較的若い方はまず凍結保存だけをしておいて、胚移植は落ち着いたタイミングでという考えを持たれていたのではないでしょうか。

ただ、当院は奈良にあり、感染者数はそれほど多くはなかったので、胚移植件数はトータルで見ると例年と変わらなかったです。

一年経って、今の現場はどのような感じでしょうか。

やはり、まずは一年経ってようやく日本にワクチンがきましたので、個人的には早くワクチンを打ってコロナにかからない体になりたいと思っています。コロナにかかってしまうと大変なことになるのでそのプレッシャーがすごいですしね。

ワクチンを打つことで、集団免疫のような形になれば良いと思っています。

培養の分野で、最近のトピックなどありますか。

ここ数年はPGT-Aですね。それとタイムラプスが実際に大きく普及してきていると思います。PGT-Aに関しては、当院でもいずれは取り入れる予定です。

タイムラプスについて当院は独自の考え方をしていまして、タイムラプスと同じような成績が出る培養方法を検討しているところです。

タイムラプスにも色々とタイプがあるのですが、基本的には無加湿と加湿に分けられます。タイムラプスは無加湿でも大丈夫ということですが、やはり加湿するに越したことはないと思っています。加湿型タイムラプスも販売されていますが、ものすごく高額な上、現在一般に普及している加湿インキュベーターよりも加湿度は劣るので、そういうことも踏まえて検討しています。

PGT-Aに関しては、パイロットスタディで複数の施設が取り組んでいるようですが、良くない面も含めて、見解を早く聞きたいと思っています。

費用面もそうですが、細胞の取り出し方一つで成績が変わりますよね。実際にPGT-Aで良い結果が出たという例もあるようなのですが、メディアも含めて、あまり良いことばかり患者さんに伝えることは避けて欲しいと思いますね。

コロナ禍において実地での研修参加などが難しくなりましたが、院内において工夫されていることはありますか。

オンライン学会は有り難いですね。クリニックとしても旅費の節約にも繋がります。また、ドクターは学会会場まで行けないことが多いのですが、オンライン学会であれば参加できることが多く、これからは併用して単位ももらえる形になるといいですね。現地へ行ける方は行けば良いですし、オンライン学会であっても費用を徴収し、同時開催する方向でいけば良いと思います。

今後のビジョンについてお聞かせください。

PGT-Aに関して、当院でもおそらく実施資格が取れるはずなので、まずはそちらに取り組んでいくことになると思います。

そのほか、培養法など、今まで常識的に行なっていた事柄を疑って検証していきます。

まとめ

昨年は日本の医療機関に勤務するすべての方が緊張し、対策に奔走した一年だったと言えます。

お話を伺い、様々な工夫をし、リスクを最大限避けながら、医療を提供されていく姿勢に現場の様子がよくわかりました。

菅内閣の目玉は不妊治療への助成強化と保険適用ということで、不妊治療におけるサポートが徐々に厚くなっている状況ですが、コロナの影響は逆に大きくなっており、不妊治療を進めていくのが難しいのではないかと思われる人も多いのではないでしょうか。

でも、現場では一人でも多くの患者さんに妊娠していただこうと努力されていることをここで共有させて頂きました。

今野室長、お忙しい中、インタビューを受けて頂き、ありがとうございました。

この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

関連サイト

ASKAレディースクリニック
https://aska-cl.com/

今野室長インタビュー(第一弾)
https://embryologist.info/askacl.html?fbclid=IwAR1tqNHP1us-fa93X-uWNky153SDLMCYcDKBJ1_hg4-iSt2UqCsnsCA5RRc

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