2016
10.01

中央クリニック 影山培養室長インタビュー

胚培養士インタビュー

今回は、栃木県内にある「中央クリニック」で培養室長として活躍されていらっしゃる、影山修平氏にお話をお伺いしました。

こちらのクリニックには研究機関も併設されており、影山氏は当初、そちらでの研究をメインとして入られたそうですが…。

培養士となった経緯や、チームとしての働きやすい環境作りについてなど、たくさんのお話を聞くことができました。

それでは、インタビューをどうぞ!

●培養士になったきっかけを教えてください。
実はこちらへは、培養士になるために来たわけではありませんでした。

元々、私は染色体や遺伝子を専門としていたので、病院に併設されていた研究部署にいました。そして、ちょうど研究のほうがひと段落していたとき、培養室で取り扱う件数が増えて人手が足りないので、ちょっと手伝ってくれない?と誘われたのが培養士になったきっかけです。

実験動物で基本的なことは全てやっていたので、すんなりと入っていけましたね。

●全く違和感はなかったのですか?
手技として違和感はありませんでしたが、実際にヒトの配偶子を使うという経験はなかったので、新鮮さや緊張感はありました。

●勤務されて何年目くらいになるのでしょうか。
平成14年からになりますので、ちょうど15年目になります。

●培養士として働き始めた当初と今では、卵や精子についての見方などが変わりましたか?
“こういう精子のほうが受精しやすい”“このような卵は、分割があまり良くない”ということは、なんとなく経験的なものとしてあると思いますが、必ずしもヒトの場合は、それが当てはまらないのかなと感じています。

クリニックの入り口です。

クリニックの入り口です。


●昔と比べて、患者さんごとの採卵の数などは変わってきていますか?
おそらく変化はないかと思いますが、来ていらっしゃる患者さんの平均年齢が大分上がってきています。以前であれば、患者さんとして来ることのなかった年齢の方などもいらっしゃいますね。そうすると、やはり数は減ってくるのかなと思います。

年齢層が変わらない方の場合は、それほど個数的には変わっていませんね。

●培養士のどのようなところに、やりがいを感じていますか?
やはり、治療を終えた患者さんが卒業していったり、生まれたお子さんの写真を送ってくれるというのはやりがいを感じますね。うまくお手伝いできたのだと感じます。

たまたま私の場合は、後輩がここで治療をしていたので、生まれてきたお子さんの成長をずっと見届けることができています。自分たちが行ったプロセスが最終的にこうなる、と実感することができました。

●培養士の方は技術的にも学術的にも、色々な研鑽を積まなくてはならないと思うのですが、そのあたりのお話をお聞かせください。
技術的なものというのは、本当に日々の積み重ねしかないと思います。

幸い、当院の場合は先輩後輩、上下分け隔てなくやっていますので、上の人がやっているものを観察しながら、「これはどうして、こういうことをやったのですか?」と、その場で、技術や情報の伝達をすることができています。

また、誰かが学会へ参加すれば、その情報を元に話し合うということもやっていますね。

培養室の様子です。

培養室の様子です。


●いま、培養士の方は何人いらっしゃいますか?
5人です。私は年齢が大分上になりますが、次の2人は30代、そしてその下の2人は大学を卒業したばかりで22,3歳ですね。

年齢のバランスが取れていますし、わりと気兼ねなく質問ができる環境です。ときには、培養士同士で忘年会をしたり、定期的に若い世代で飲みに行くこともあります。

●いま、一番興味をもっていることを教えてください。
欧州に本社があるメーカーの方から教えてもらったのですが、胚に対してキッズスコアという形で、その卵が妊娠しやすいのかどうかを評価するシステムがあるそうです。欧州のビッグデータにつなぎ、本社内のサーバーに蓄積されている過去の卵のデータに直結して、一番可能性がある卵を教えてくれるというものです。

胚盤胞であれば良好だと評価することはできるのですが、そのシステムだと通常の分割胚で評価することができるそうなので、どのような卵が妊娠しやすいのかについては興味がありますね。

●着床前診断には関心をもたれていますか?
そうですね。そちらの研究も進める方向では動いています。

●チーム医療なので、例えば、ドクターやナース、事務部門と連携をしていかなければならないと思うのですが、そういうところで気を配っていることはありますか?
一番はやはり情報の伝達ですね。医師からの指示が培養室だけにしかきていないにも関わらず、医師が全部に指示を出してくれたと勝手に勘違いをしても困ります。そのため、情報の確認などを各部署ではかり、伝達のミスなく、情報の統一をするように気をつけています。

●培養室として、患者さんへの情報発信や情報共有は何かされているのでしょうか。
培養室単体ではないのですが、月2回ほど、不妊治療をなさる患者さんの勉強会を開催しています。また、個別相談自体は医師や看護師の説明だけではわかりにくいというところがあれば、対応するような形をとっています。

以前は、すべての患者さんに対して移植後に行っていましたが、あまりにも時間がかかりすぎてお待たせすることが多かったですし、中には当然、質問のない方もいらっしゃいます。そのため、必要とされる方だけに実施しています。

●勉強会では、どのようなことをされているのですか?
通常、看護師から不妊治療における誘発法や採卵法など全ての流れについての説明を、培養室からは体外受精と顕微受精、そのほか精液の検査についても細かくスライドやビデオを使いながら説明をしています。実際に治療に入る前の頭ならしではないですが、わかりにくい点や聞いておきたいことなどのポイントが絞れればと思っています。

クリニックでの患者さん勉強会の様子です。

クリニックでの患者さん勉強会の様子です。


●今後のビジョンをお聞かせください。
今は人数が少ないので、一緒くたになって仕事をこなしています。なので、ある程度部下に力量がついてきたら役割分担をして、整理されたような形で仕事がまわせるようになればいいかなと思っています。

●栃木県では、培養士の方の採用は難しいところがあるのでしょうか。
そうですね。募集をかけてもそうそうくるものではないと思います。

幸い、私の場合は出身大学が県内にある関係上、5人のうち3人は自分の後輩です。わりと、エンブリオロジストになりたいと興味を持つ女性は多いですね。

以前、大学の就職担当の方から、培養士の仕事について説明して欲しいという依頼があったので、1,2回くらい話したことがあります。最近では呼ばれることがなくなったので、認知されてきたのかなと感じています。

●最後にこれだけは伝えておきたいということがあれば教えて下さい。
培養室の規模が小さいので、5人入ったら動く場所が少なくなり、人数的には目一杯になります。なので、その都度、誰かが出て行って雑用をこなしてくるという感じです。

培養士の人手が足りなくて増やしてもらったのですが、これからは培養室の規模についても検討していきたいですね。

最後に
培養士同士の風通しが良く、影山氏の人柄もあって、培養室全体で不妊治療に取り組んでいらっしゃる様子がよくわかるインタビューとなりました。

特に、気兼ねなく質問ができたり、意見交換できる雰囲気というのはどこでもできることではないですし、後輩も育ちやすいですし、何より上の立場であっても刺激を受ける素晴らしい環境なのではないかと感じました。

お忙しい中での取材を受けて頂いたことを感謝いたします。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

<関連サイト>
中央クリニック
http://www.centralclinic.or.jp

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