2018
12.01

一人前の培養士になるまで(4)〜精液処理のあれこれ〜

胚培養士の基礎知識

前回、精液検査についてお話しましたが、精液検査は、精液処理の基本です。しっかりとマスターしましょう。今回は、精液処理についてお話します。

●AIH(Artificial Insemination with Husband’s semen;ご主人の精液を使った人工授精)の精液処理

新人培養士が精液処理で最初に実践するのは、AIHの精液処理かも知れません。

AIHの実施基準は、各施設によって違いますが、精液検査の観点からは、おおよそ、総運動精子数(精液量×精子濃度×液量)が500‐1000万個以上を実施基準として採用していることが多いでしょう。

AIHの精液処理には密度勾配遠心法(パーコール法)が用いられます。従来は、等張化80%パーコール液が用いられていましたが、現在は、パーコール溶液と類似組成の密度勾配分離剤が広く使用されています(Isolate®、PureCeption®など)。

形の良い運動精子は比重が高く、死滅精子あるいは奇形精子は比重が低いため、精液を遠心分離して密度勾配分離剤を通過させると、形の良い運動精子が効率よく回収できます。

また、精子が密度勾配分離剤を通過し、試験管の最底部に沈むまでの間に精液中の雑菌なども除去され、衛生面でのメリットもあることから、ほとんどのAIH実施施設において密度勾配分離剤は用いられます。

以下、手順について述べます。

①試験管の底部から、密度勾配分離剤、培養液で希釈した精液という順番で層積します。
②層積した試験管を遠心分離します(2000rpm程度、20分程度)。
③遠心分離後、元気の良い運動精子は試験管の密度勾配分離剤層の最底部に沈み、死んだ精子や形の悪い精子は、密度勾配分離剤層の比較的上部に溜まります。
④試験管の最底部に沈んだ精子のみを回収し、培養液で希釈してAIHに用います。

●体外受精・顕微授精での精液処理

体外受精、顕微授精の精液処理においては、密度勾配遠心法に加え、swim-up(スイムアップ)法を用いて精液を調整します。
swim-up法は、さらに高い運動能力をもつ精子を回収する目的で、一般には、密度勾配遠心法で得られた良質な精子を用います。

具体的には、試験管の底に密度勾配遠心法で得た精子を入れ、その上に培養液を層積し、培養液の上方へと泳いできた精子を回収する方法です。こうすることで非常に運動能の高い精子のみを回収することが可能になります。

●精液処理のポイント

まず、新人培養士の方は、密度勾配遠心法の使用目的をしっかりと覚えておきましょう。目的を覚えて理解しないと頭に入りませんからね。
・運動(生存)精子を分離する
・雑菌を除去する

また、なぜ、体外受精、顕微授精にswim-up法を併用するのかもよく考えておきましょう。

なお、顕微授精実施において、精液中に極少の精子しか見当たらない場合は、密度勾配遠心法やswim-up法を用いることができない場合もあります。この場合は、精液を遠心分離して一旦すべての精子を回収し、顕微鏡下で精子の形態を目視して選別し、顕微授精に使用することになります。

 

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