03.01
一人前の培養士になるまで(6)〜受精判定について〜
今回は受精判定です。最近は、タイムラプスシステムを用いてAIに受精判定させることなども検討されていますが、すべてのクリニックがそういうシステムを取り入れるのはまだまだ先の話でしょう。現状では、培養士の目できちんと受精判定できるようにしないといけません。胚培養士の根幹にかかわる業務ですからね。以下、通常の受精法(conventional-IVF、従来法)での受精判定のプロセスについて、写真を用いて説明いたします。
図1のように、太さの違うピペットを使って判定します。
上の細いピペットは仕上げ用で、太いピペットは胚の移動用です。
図2は、体外受精させた(授精)翌日のシャーレ-の様子です。
図3は、受精卵にピペットを近づけた写真です。これから、このピペットを使って、受精卵を吸い取ってシャーレ-から剥がします。
図4は、剥がしたあとの受精卵です。ピペットの上部に確認できます。
受精卵を吸い取って、剥がすときの操作は結構勇気がいります。また、受精卵が剥がれているにも拘わらず、吸い続けていると、受精卵がピペット内に付着して吐き出せなくなり、受精卵紛失などのトラブルにもなります。ですから、ピュッと吸って受精卵が「剥がれたっ」と思ったら、サッと吐き出します。これには訓練が必要です。
図5は、剥がした受精卵の拡大図です。
この状態では、受精卵の周りに、精子や卵丘細胞が少しついていますので、図1の細いピペットを使って、精子や卵丘細胞を除去し、受精判定します。図5は、剥がした受精卵の拡大図です。
受精判定
図6は、正常受精形態(2PN胚)です。中央部分に「前核(PN)」と呼ばれる核が2つ確認できます。
図7は、3PN胚です。中央部分に前核が3個確認できます。これは、従来法では、精子が卵子内に2個侵入することで起きますし、顕微授精においても、第二極体放出がうまくいかない場合に見られます。
図8は、1PN胚で、前核が何らかの原因で、1個しか見られない場合です。
図9は、未受精卵です。前核がまったく見られません。精子が侵入していないと考えられます。
原則として、正常受精卵(2PN胚)以外は治療には用いませんので、この受精判定は非常に重要です。正確に受精判定できるように日々訓練しましょう。
コメント
この記事へのトラックバックはありません。
この記事へのコメントはありません。