2017
06.07

LABOX(ミオファティリティクリニック内)甲斐主任研究員インタビュー

胚培養士インタビュー

今回は、鳥取県米子市のミオ・ファティリティ・クリニック ファティリティリサーチセンター(LABOX(ラボックス))主任研究員である、甲斐 義輝さんにお話をお伺いしました。

甲斐さんは以前、胚培養士として活躍されていましたが、現在はクリニック内に併設されているLABOXという研究専門の施設にいらっしゃいます。

国内外を問わず、数々の学会で受賞した研究はここから生み出されたと言っても過言ではありません。そんな素晴らしい研究者である、甲斐さんに迫ることができた貴重なインタビューとなりました。

それでは、気になる内容をどうぞ!

●胚培養士になったきっかけについて教えてください。

私は鳥取大学出身なのですが、博士を取った後に、茨城県で企業の研究員をしていました。抗がん剤の開発に関わっていたのですが、縁があって見尾先生と出会ったことがきっかけですね。

それまでは正直、生殖医療についてはほとんど知らなかったのですが、見尾先生に、ここでも研究ができるとおっしゃって頂いたので、こちらに来ることになりました。

2011年に入職したので、今年で7年目になります。

●企業の研究員からクリニックのラボに移ったわけですが、どのような違いを感じていらっしゃいますか?

私はこれまで、ずっと研究の道で生きていくのだろうと考えていました。
研究者はアカデミックに残るか、企業の研究員になるか、大きく2つの道に分かれると思うのですが、アカデミックに残る人は本当に純粋な基礎研究をしているという感じですよね。

私はそれとは違い、研究の成果を社会に還元したいという思いが強かったので、企業に就職したという経緯があります。

ここに来てから感じることは、クリニックの研究というのは臨床現場に直結させることが可能ですし、アウトプットまでの距離が短いということですね。実際、私も胚培養士として2年間やっていましたが、患者さんとの距離がすごく近いですし、臨床上のニーズに応えて研究の成果を出すまでの間が、非常にスピーディであるところがいいですね。

企業で製薬に携わっていたとしても、それが形になっていく部分が見えないですよね。製品になるまでの時間が長いですし、クリニックではそうではないところが非常に魅力的です。

●ご出身は鳥取なのでしょうか?

私は福岡県出身で、こちらに来た当初はあまりの田舎っぷりに驚きました。しかし、博士課程修了までの9年間、鳥取県にいましたが、住めば都という言葉通りですね。米子という土地は確かに田舎ですが、就職で米子を離れて茨城県に行き、米子が恋しかったというのが正直なところです。

ここは、ほどよく田舎でほどよく都会で、自然もありますしね。私にとって、米子は非常に愛着のある土地ですし、もう第二のふるさとのようになっています。

これは、以前から思っていることであり、かつて私が師事した教授もおっしゃっていたことなのですが、「米子から世界へ」という言葉がスローガンになっています。片田舎から世界へ勝負するという気概は昔からありましたし、見尾先生も同じ考えをお持ちなので、今は、それらが上手くマッチしているのかなと思っています。

●国内に数多くの施設がある中で、毎年、学会などで受賞もされていますよね。その秘訣は何でしょうか?

研究環境が整っているということが非常に大きいですね。

見尾先生だけではなくクリニック全体の理解があり、設備も整っています。これだけの環境が揃っているならやらなければならない、といったところでしょうか。

研究テーマについても、見尾先生は長年、臨床をされてきた方ですので、そこから生み出されるアイディアというのは私にはない部分が多いですね。

また、他のクリニックでは、これまで基礎研究を長らくされてきた方は少ないのではないかと感じています。LABOXには私を含めて2名の研究スタッフがいますが、昔から研究畑でやってきた人間ですので、それが臨床の中で上手くやっていけているというところも大きな強みではないでしょうか。

●クリニックの忘年会などでは、普段の優秀な研究者とは違ったユニークな一面も垣間見えます。研究者ではそのようなタイプは少ないような気がしますが、いかがでしょうか?

おそらく、学生時代、特に寮生時代の影響が大きいと思います。
私は鳥取大学医学部出身ですが、医師になるための医学科ではなく、医学の基礎知識を学んだ研究者を養成する生命科学科という学科に在籍していました。そして、私が所属していた研究室にも、私と似たようなタイプがたくさんいましたよ。

●ご出身である、生命科学科の強みを教えてください。

今は、生命科学科という学科をもつ大学が結構あると思いますが、医学部で生命科学科というものを持ったのは、鳥取大学が初めてになります。
そのため、本当に医学の研究を志す人たちが多く、それが強みですね。
とてもユニークな研究もしていますしね。

培養室の部長も同学科の先輩ですし、もう一人の研究スタッフも先輩です。大学の後輩で今後、生殖医療の分野に携わろうという人も徐々に広がってきています。実際に培養室には後輩も在籍していますし、培養室の見学に来る後輩も多いですね。

●今後は、どのような研究を考えていらっしゃるのでしょうか。

私も以前は2年ほど、胚培養士をしていて認定資格も取りましたが、今は臨床には関わっておらず、研究一筋でやっています。

研究テーマについては、二種類を並行して考えるようにしています。
一つは新たな治療法の開発など、臨床に直結するようなテーマをもっておきたいということですね。

例えば、生殖医療に体外培養は必須ですよね。でも、それは母体内ではあり得ない環境なわけで、酸化ストレスなどの体外環境ストレスがどうしてもかかってきます。そういったストレスを軽減するような培養法を開発したいと思っていますし、実際に、そういう研究も行っています。

また、もう一人の研究スタッフが行っているテーマになりますが、卵の周りにある細胞、これを解析することによって、卵の質を評価できるようなマーカーとして使えるのではないかという研究も行っています。

このように、臨床に直結する研究を重要にしていきたいというのがあります。

もう一つは、生殖や発生の基礎的な理解を深めるための研究ですね。
我々は卵子、精子、初期胚を扱っていますが、まだわからないことが本当にたくさんあります。そのため、臨床に直結するわけではないですが、その基礎理解をさらに掘り下げていきたいですね。

例えば、受精した時の卵というのは一個の細胞で、それがどんどん分裂していき、胚盤胞期になると細胞が胎盤になる部分と赤ちゃんになる部分に分かれていきます。そして、着床後には非常に複雑で多種多様な細胞へと分かれていき、我々の身体が構成されていくわけですが、それがどのようにコントロールされているのか、どのように細胞の種類が分かれていくのかといったことに大変興味を持っています。

実際に少し進めているところで、まずは赤ちゃんになる細胞と胎盤になる細胞がどう分かれていくのかというメカニズムの解明に少しでも近づきたいと研究に励んでいます。

どちらの種類の研究も非常に面白いですし、まだまだ不思議なことはたくさんあります。
そのため、臨床での応用を目指した研究と、基礎に重点をおいた研究、この二本柱でやっていきたいと考えています。

●胚培養士で研究心を持った方が、甲斐先生と組みたいという方が増えてきそうな気がしますが、そのあたりはどうでしょうか?

コラボできたら、それは嬉しいですね。
自分たちで出来ることというのは限られているので、共同研究は重要だと考えています。特に、私は異分野との融合こそが新たな発見につながるという考えを大切にしています。

そのため、手を組んで面白いものを生み出せるのであれば、積極的にやっていきたいですね。

●普段の生活や健康管理、趣味などについて教えて下さい。

規則正しく生活しています。もう、体力ももたないですし、徹夜することもないですね。運動はこれといってしておらず、片道15分の自転車通勤をしているくらいです。

健康管理で最も効果的なのは妻の手料理とお弁当に尽きると思います。ちゃんと栄養管理してくれているので、健康が守られていると言っても過言ではないと思います。とても感謝しています。

実は、半年くらい前までは本当に活字が嫌いで、本は全く読まなかったのですが、ここ最近は読書を始めて月に5、6冊は読んでいます。ようやくこの歳で、読書の面白みがわかってきましたね。

●最後に、これから胚培養士や研究者になろうという人たちに向けて、アドバイスをお願いします。

仕事をしていく中で、たくさんの疑問が出てくると思うので、それを大事にしてやっていくことが重要かなと思います。

胚培養士で研究したいという方は結構おられるのですが、ノウハウがないという場合もあります。もし希望があれば、喜んでお教えいたしますし、もし可能であれば、出張してお教えすることができればいいなとも考えています。

<まとめ>
米子という土地から世界にむけて発信できているのは、甲斐さんの優秀さとクリニック全体の協力があってこそ実現できることなのだと強く思えたインタビューとなりました。

LABOXは2011年にできた施設になりますが、これからもより一層素晴らしい研究をされていくのだろうと感じています。

甲斐先生、お忙しい中、取材を受けて頂き、ありがとうございました。この場をお借りして、厚く御礼申し上げます。

<関連サイト>
ミオ・ファティリティ・クリニック
http://www.mfc.or.jp

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください(スパム対策)