2016
03.01

松田ウイメンズクリニック培養室インタビュー(鹿児島)

胚培養士インタビュー

胚培養士ドットコムではこれから日本全国の胚培養士の皆さまにインタビューを行っていく予定ですが、記念すべき第一回は鹿児島を代表する不妊専門クリニック、松田ウイメンズクリニックで働く培養士の皆さまにお話を伺うことができました!

鹿児島市にあるこちらのクリニックでは、培養士が直に患者さんへ説明する機会もあり、患者さんにとっては顔が見えている分、距離が近く感じられ安心感も与えてくれます。加えて、全体の雰囲気もよく、受付や看護師との連携も上手くとれている魅力的なクリニックです。

そして、気になる培養士の生活も少しだけですが、垣間見ることができました。
それでは、インタビューをどうぞ!

●仕事の忙しさに波があるかと思いますが、顕微受精や胚の培養をされていない時間はどう過ごされていますか?

当院では採卵室の管理も培養士が担っているので、時間がある時には採卵で使う道具の補充や、滅菌するために必要な下準備などをしています。

このような準備については、明確な役割分担が決まっているわけではないのですが、それぞれ得手不得手がありますので各々、得意なものを準備したり調べたりしていますね。

他には、学会で発表するためのデータの整理なども合間をみて行っています。

●こちらのクリニックでは、受付や看護師など他部署との連携の部分が上手くいっていると感じていますが、コツや秘訣があれば教えてください。

お昼にみんなで一緒に食事をする時や、診療の合間に少し外へ出た時によく話をしていますね。
気になることがあれば、後輩や部下の話を拾ってきて、上同士で話をし、また下にという流れはあります。

また、話をする際には一方的にならないよう相手の話も聞きながら、こちらの意見を上手く伝えるようにしています。お互いに意見をぶつけ合うだけでは上手くいきませんので、着地点をどこにするのかという部分は上の仕事かなと思っています。

●培養士の仕事は成績を求められると思うのですが、そのあたりのプレッシャーとはどう戦っていますか?

医師からのプレッシャーはありますね。
では具体的にどうしているのかというと、個人の成績を出した上で、各々の技術を磨いていきます。もちろん、時間のあるときには練習もしますし、学会へ参加したり他施設の方の話を聞いたりして日々、勉強をしています。

顕微受精や受精率などの成績は毎月出るので、それが一つの目安にはなりますね。


●どちらかというと、培養士の仕事は一日中うちに籠る仕事ですよね。時には煮詰まってくることもあると思うのですが、そのような場合はどうされていますか?また、肩こりや眼精疲労のセルフケア法などあれば教えて下さい。

スタッフはみんな話すことが好きなので、勉強になる話からそうでないものまで、色々な話をしています。そういうときは笑っていることが多いので、それがある程度息抜きになっていると思います。

もちろん忙しいときは多少、緊張感もありますが、スタッフはオンオフを上手く使い分けながら仕事をしていますね。

培養士の仕事は細かい部分が多く、肩こりや眼精疲労も出てきます。ケア方法は人によってそれぞれですが、定期的に整骨院に通ったり、ツボ押しなどを使っています。中にはもう諦めている培養士もいますけれども。笑。

●培養士の仕事のやりがいは、患者さんが子供を授かることだと思うのですが、それ以外にもいくつかありますか?

大学のときの研究テーマがICSIだったので、文句のつけようのない良質な卵子ではなかった場合にICSIをして手応えを感じ、翌日に成功していた場合などはモチベーションが上がります。満足のいく工程を経ることができた場合は、成功する確率も高いですしね。

また、他のスタッフの話ですが、高校時代に生物を教えてくれた恩師に、培養士になることを伝えたところ「よかったね。感謝しかされない職業だよ。」と言われたことが励みになって今もこの仕事を続けられているそうです。

特に、その恩師の授業で扱ったクローンに興味を持ったことがきっかけで培養士の道に入ったそうなので、尚更、胸に響きますよね。

●患者さんは鹿児島市だけではなく、離島からもいらっしゃいますよね。市内と比較すると、患者さんの年齢層は変わりますか?また、離島ならではというお話があれば教えて下さい。

離島からいらっしゃる患者さんの年齢層ですが、極端には変わりません。ですが、離島の場所によっては凍結精子を使わなければならないこともありますので、そういう場合はICSIになりますね。結果的に、市内の方よりはICSI率が高くなっています。

また、沖縄に近い奄美のほうはちょっと遠いですし、自己注射も多くなる傾向があります。それに比べると、屋久島や種子島の方だと近いほうですし、種子島には婦人科の医師がいるので治療は進めやすいのかなと思います。

離島で一番困ることは、夏の台風ですね。この時期は、台風のために移植がキャンセルになることもあります。台風による欠航で来院できないを防ぐために宿泊するとしても、費用もかかりますしね。私たちも台風が近づいている時には、飛行機や船の欠航状況をチェックしたり、患者さんに到着時刻などの確認の電話をしたりしています。

●男性不妊の率は他の地域と比べると如何でしょうか?精子の数などに変化はありますか?

全国平均と比較したことはないですが、それほど差がある印象は受けませんね。

でも、入職した十年ほど前よりは、精子の数が減ってきている気がします。当時は、マクラーチャンバーで精子数をカウントすると億を越えている方もいましたから。当院では精子の奇形率まで確認していませんが、運動性はそれほど変わりないと思います。

●まとめ

今回は複数の培養士の方々とお話する機会に恵まれ、本当に様々なお話を伺うことができました。不妊治療される患者さんの年齢は全体的に上がっています。それに伴って、卵1個に対する価値が以前よりも増し、培養士の重要性も相当高まってきています。

しかし、患者さんですらまだ培養士という職をよく知らない場合も多く、このように命を生み出すスペシャルな仕事をもっと広めていきたいと、この取材を通して強く感じました。

松田ウイメンズクリニックのみなさま、お忙しい中、お時間を頂戴しありがとうございました。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

<関連サイト>
松田ウイメンズクリニック 高度生殖医療センター
http://www.synapse.ne.jp/~kaz/index.html

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