2017
05.01

岡本ウーマンズクリニック 秋吉培養士長インタビュー

胚培養士インタビュー

今回は、長崎県にある岡本ウーマンズクリニックの秋吉培養士長にお話を伺うことができました。

院長である岡本先生自らも管理胚培養士としての資格をお持ちであるため、培養室は最も力を入れている部門のひとつだと言ってもいいのではないでしょうか。

そして、こちらのクリニックはISOの取得やJISART(日本生殖補助医療標準化機構)に入会しているなど、より良い環境づくりと妊娠率の向上に対して積極的に取り組まれています。

長崎という土地柄における特色なども教えていただいた、興味深いインタビューとなりました。どうぞご覧ください。

●胚培養士になられたきっかけを教えてください。
きっかけというよりは、導かれてきたような感じですね。
元々、大学では生物工学を学び、ドラッグデリバリーシステムや未知の病原体などの試薬としてモノクローナル抗体を使おうという研究を行っていました。

ちょうど就職する頃、ヒトゲノムなどが盛んになってきた中で私は、大学で5年ほど、インジェクションやノックアウトなどの実験動物や胚の管理などに携わっていました。そして、色々と勉強しているうちに、不妊治療という形でヒトの胚や精子を扱う仕事があるということを知りました。

自分がいま持っている技術で人の役に立てるのであればと思い、大分県出身なので九州での求人を調べていたところ、ちょうど長崎でみつかった次第です。
そのため、自分の強い意思で来たというよりも、今から考えると何となく導かれたような感じです。

●こちらで勤務されて、何年目になりますか?また、勤務された当初と比べてどのような変化がありましたか?
ちょうど、11年になります。
最初に勤め始めた頃は、まだ件数も200件ほどくらいでしたし、学会自体も基礎の基礎でした。

10年経つと全く変わり、症例も工程も増えましたね。良いのか悪いのかわかりませんが、今では自分の施設で培養液を作るといった基本的なことは殆どなくなり、既製品を買えばある程度の結果は出せるという時代になりました。

かといって、遺伝子などの知識が求められる時代になってきているので、そう考えるとやはり、時代の流れとともに求められるものというが変わってきているなと感じますね。

より専門性が求められるようになってきましたし、ひょっとしたら胚培養士も細かく枝分かれしていくのではないでしょうか。

●院内で、学術的な知識レベルを維持するためにされていることはありますか?
第一は、学会に参加することです。
そして、学会後にみんなで話し合い、当院でも取り入れられるものであれば取り入れていこうといった話し合いの場を設けています。

そして、先生方との間では、毎週火曜日にカンファレンスを行っています。
また、ラボの中でも反復不成功の症例があれば、データベースを見ながら前回の結果を検討して、今回の方向性について話し合いをしています。

●どのような部分にやりがいを感じますか?
私はある意味、好きでやっているので苦にはならないですね。また、自分で手がけたことが結果として出てくるので、そういう部分にはやはり、やりがいを感じます。

胚培養士は、大学でそういった選考をしてきているので、私と同じような人が多いと思います。ただし、データ収集などは好き嫌いが分かれると思いますが。

●現在、胚培養士の方は何人いらっしゃいますか?
5人おり、3人がシニアで顕微授精を中心に行い、あとの2人は去年入ってきたのでまだまだという感じですね。去年入ってきた胚培養士は九州出身で、一人は長崎県出身、もう一人は佐賀県出身です。募集をしていても、Uターンという形で九州出身の方が希望されることが多いですね。

日々、症例に追われているというのが現状なので、あと2人くらいスタッフが欲しいところです。

●仕事をやっている中で、課題や問題などはありますか?
まず、課題として人員の少なさがあります。
そのほか、近々のものとして、遺伝の知識などは学ばなければいけないと思っています。ですが、なかなか一人ではしないですし、教える人もいないというのが現状なので、自分たち皆で勉強して身につけていかないといけないですよね。

●施設基準やJISARTについて、大変な部分もあるのではないでしょうか。
そうかもしれませんが、一旦してしまうと、なければ気持ち悪いものになっていきますね。ISOも同じく、きついことはきついですが、逆にしないと本当に気持ち悪く感じます。

●受付やナース部門など、他チームとの連携について気をつけていることがあれば教えてください。
私自身がISOの統括も行っているので、全体として話をしていかなくてはなりません。その点では、特に仲が悪いという部分はないと感じています。

やはり、話をしなければ向こうからも話が出てこないので、世間話も極力するようにし、些細なことでも向こうから話せるような雰囲気を作るように心がけています。それが、ちょっとした症例間の連携や、伝言においても大切な一言が出てくる可能性を生むと思っています。

●今後、自分たちでやっていきたいことがあれば教えてください。
基礎的な研究はしてみたいですね。
みんな好きでやっていく中で疑問が生じるようなので、それを科学的に解明していくための力と場所を提供できればいいのかなと思います。

●これから胚培養士を目指す人へ、アドバイスがあればお願いします。
胚培養士の仕事は非常に面白いですし、本当は体の中でしか見ることができないものを体外で扱い、見て触れることができます。そして、生命の誕生というところに立ち会えるところがやはり、一番やりがいを感じるところですね。

そのため、当院では卵や胚を凍結保存した人が解凍し、胚移植までするようにしています。自分で全ての工程を担当することは効率が悪いのですが、自分で最後まで責任を持って行い、結果が見られるようにしています。大きい施設だと難しいのですが、当院の規模であればこそ出来ることだと思います。

●最後に、これだけは伝えておきたいということがあればお願いします。
院長はARTへの思い入れが強く、ラボに対する姿勢もとことん突き詰めてやるということでもあります。大変かもしれませんが、その分、しっかりとした技術が維持されて、結果を出せると思います。

また、長崎からでも積極的に学会などに参加する機会があるので、全国と比べても遜色なく治療ができると感じています。長崎県は、離島において特殊出生率がまだ高いのが特徴です。また、患者さんの平均年齢が都会だと40歳ほどですが、長崎だと37歳くらいなのでまだ恵まれた環境ではないでしょうか。

 

●最後に
今回も非常に有意義なお話を伺うことが出来ました。
長崎という地方都市において不妊治療専門クリニックが少ない状況の中でも高いレベルで医療を提供していこうという姿勢は患者さんにとっても大きな福音だなと思いました。

また、大都市圏では不妊治療を受ける患者さんの年齢が高くなってきていますが、離島を含む長崎県ではまだ30代後半の患者さんが多いということで、より妊娠率の向上が期待できる環境があるのだと改めて認識させて頂きました。

多くの人にクリニックの存在を知って頂き、上手に活用して頂きたいと感じた取材でした。

秋吉先生、お忙しい中、取材を受けて頂き、ありがとうございました。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。

<関連サイト>
岡本ウーマンズクリニック
http://www.okamotoclinic.gr.jp

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