2020
07.28

PGT-Aについての基礎知識

着床前診断

PGT-Aとは

PGT-A(Preimplantation genetic testing for aneuploidy)とは着床前診断の一種であり、着床前胚染色体異数性検査と呼ばれています。近年の研究によって、年齢が高くなればなるほど受精卵における染色体異常が増えることがわかっており、これが原因となって流産や反復着床不全となる可能性が高まります。

そのため、体外受精によって得られた受精卵の染色体数を予め検査し、染色体に問題のない胚を移植する方法がPGT-Aです。

欧米では既に実施されている方法ではありますが、国内においては次第にニーズが高まってきたことを受け、「反復体外受精・胚移植(ART)不成功例、習慣流産例(反復流産を含む)、染色体構造異常例を対象とした着床前胚染色体異数性検査(PGT-A)の有用性に関する多施設共同研究」として承認を受けた施設でのみ実施されています。

適用について

PGT-Aは、高度な技術を用いて受精卵の一部を取り出し、染色体数に異常がない場合は胚移植することで流産や反復着床不全を防ぎ、妊娠率を向上させることを目的として行われます。

非常にデリケートな検査となりますので対象者が限られているほか、十分な知識をもった専門家によるカウンセリングが必要となります。さらに、PGT-Aは日本産科婦人科学会に申請された臨床研究計画書に基づいて実施されなくてはなりません。

なお、PGT-Aの対象となる方は、下記の通りです。

・ARTを実施しており、直近の胚移植で2回以上連続して臨床的妊娠が成立していない方

・直近の妊娠で2回以上連続した流産を経験している方※

・夫婦うち、いずれかが染色体構造異常である場合

他の着床前診断との違いは?

着床前診断には、PGT-Aの他に次のものがあります。

PGT-M

重篤な遺伝性の病気を持つ子供が生まれる可能性のある場合に、遺伝子の異常がないかどうか調べてから胚移植をする方法です。

PGT-SR

染色体の形が変化することが原因となり、2回以上流産を繰り返している場合に、染色体構造異常を調べてから胚移植をする方法です。

メリットとデメリット

メリットは何と言っても、胚の染色体数を予め調べることで流産のリスクを回避できる可能性が高まることです。不妊治療において大きなメリットがあると考えられます。

デメリットとしては、検査を行うためには胚の一部を採取する必要があるのでダメージを与える可能性があることです。また、全ての胚が同じ染色体数であるとは限らず、必ず流産を防ぐことができるとは言えません。

費用は?

施設にもよりますが、PGT-Aは自費診療となるため胚盤胞1個あたりおよそ5万円程度の費用がかかります。このほか、採卵や胚の凍結をする場合は、別途費用がかかることになります。

行っている施設は?

現在、PGT-Aは、日本産科婦人科学会で承認を受けた施設においてのみ実施されています。

登録施設においては、生殖医療専門医の常勤が必要であるほか、PGT-Aに関するカウンセリングが行えることや、患者さんの希望があった場合には遺伝学における専門的知識を持ったカウンセラー等によるカウンセリングが受けられる環境を整えることなどが必要となります。

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