2020
02.15

卵子の質と妊娠率の関係

胚培養士の仕事, 胚培養士の基礎知識

すでに不妊治療をされている方や、これから妊活をしようと考えていらっしゃる方は「卵子の質」や「卵子の老化」といった言葉に、とても敏感なことと思います。何となく、質が良いと妊娠率は上がりそうなイメージはありますが、一体、卵子の質は妊娠にどのような影響を及ぼすのでしょうか。

私たちが加齢とともに肌が衰えたり機能が低下していくように、卵子も日を追うごとに年を重ねて問題が生じやすくなっていきます。つまり、排卵はしていても受精できないものや染色体異常を持つことが増えてくるのです。

どうしてこのような老化が卵子に起こるのかというと、卵子の元となる原始卵胞は生まれた時にはすでに卵巣内にあり、それから新しく作られることはないからです。そのため、卵子は女性の成長とともに年をとっていくのです。

胎児期に作られた原始卵胞は成長が止まった状態で年々、数が少なくなっていき、思春期の頃からホルモンの影響で排卵が始まります。この時、主席卵胞のみが成熟、発育し、他の卵胞は次回以降の排卵を待つことになります。

排卵で選ばれた卵胞が全て、染色体異常がなく受精可能なものかというと、実はそうではありません。町内会のくじ引きで使われるようなガラガラポンを想像していただけるとわかりやすいのですが、主席卵胞となるものはたまたま選ばれているだけのものになります。

卵子の質が良くないということは染色体に何らかの問題を抱えている染色体異常のことを指すわけですが、残念ながら卵子を観察しただけでは染色体異常を見抜くことはできません。

そのため、採卵した卵子で人工授精や体外受精を行っても受精しなかったり、途中で成長が止まってしまうということが起こってしまうのです。また、流産を繰り返す不育症も染色体異常が原因であるように、着床したとしても流産してしまうこともあります。

染色体異常は母親の加齢によって増えていくことがわかっています。また、男性の年齢が上がるにつれて、精子における染色体異常の頻度も高まっていきます。

現時点では、残念ながら染色体異常を正常に戻すことはできません。しかし、生活習慣の乱れや喫煙などにより染色体異常を増やしてしまう可能性は十分に考えられます。不妊治療だけに限ったことではありませんが、適度な運動と食生活は体全体の健康を保ち、妊娠中だけではなく出産後にも良い影響をもたらすのではないでしょうか。

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