2016
02.09

タイムラプスについて

胚培養士が使う仕事道具

みなさんは、タイムラプス(time-lapse)をご存知でしょうか。
直訳すると、低速度撮影やコマ撮りといった意味になるのですが、撮影したものを通しで見ることで、時間の経過とともにどのような状態を辿っていったのか確認することができます。

近年、この技術は不妊治療、とりわけ胚培養の分野に対して使われるようになってきました。
体外受精であっても顕微授精であっても、採卵後からずっと、卵子、胚はインキュベーターの中で培養することになります。元来、体内で受精、発育していく胚にとって、体外での環境は非常に過酷なものです。そのため、出来るだけ体内と同じような環境を作り出しているのがインキュベーターです。

一方、胚培養士は、体外受精・顕微授精実施後に正常受精しているか、順調に胚が発育しているか、あるいは、胚にグレードをつけてどの胚から移植していくかなど、顕微鏡で実際に胚を観察しなければならないことはたくさんあります。

このとき、一時的ではありますが、胚は外部の環境にさらされることになり相当のストレスが生じます。
胚が受けたストレスは、その後の発育にも悪影響を及ぼしてしまう可能性があるので、こういった事態は出来るだけ避けたいものです。

このような想いを汲み取るかのような技術がタイムラプスになります。
では具体的に、その詳細をみていきましょう。

●タイムラプスを適用した観察システムとは?
インキュベーター内に専用のカメラ付き顕微鏡を設置します。もしくは、予めインキュベーター内に顕微鏡が内蔵されている製品もあります。

これらはもちろん、高温多湿の環境下でも正常に使用できるように製造されています。また、観察装置が原因となってコンタミネーション(雑菌繁殖などによる細菌汚染)しては元も子もないので、滅菌できるようになっていたり、レンズ内に結露ができないようになっているなど様々な工夫がされています。

さらには、ピント調整のためにいちいち開けるのではインキュベーター内に設置した意味がありませんので、それらの操作もパソコンで行えるようにもなっています。

このような装置を使うことで、胚の成長過程を動画や、一定間隔で撮影した画像を用いて確認することができるようになりました。これは非常に画期的な革命です。

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●タイムラプスのメリット・デメリット
24時間モニタリング観察ができるので、インキュベーターを開けることなく発育状態を確認することができます。従って、最善の環境下で培養を続けることができるようになりました。

また、受精卵がどのようなスピードで、どういった分裂パターンを辿っているのか確認することも可能です。

胚は成長が速ければいいというものではありません。適切な時期に規則的な分割をしている胚のほうが、良質であるといえます。タイムラプスは、画像を元にしてこれら複数胚から良好なものを選び出す重要な資料となり得ます。

仮に、成長が途中で止まってしまった場合でも、どの時点で問題が生じたのか確認することができ、次回以降の胚培養に生かすことができます。

体外受精を行った後は、翌日に卵子および精子由来の前核が胚の中に並んでいることを確認して、受精完了となります。ですが、これからさらに数時間経過すると2つの前核が融合してしまうので、場合によっては前核を確認できないこともあります。
しかし、このような場合でもタイムラプスの機能を用いることで、残存している画像で核の存在を確認することができ、正常に受精が完了したか否かがわかるわけです。

そのほか、患者さんも実際の発育過程を見ながら確認することができるので、治療に対しての納得性も高く、パートナーの協力も得られやすいという点もメリットとしてあげることができます。

ただ、このタイムラプスのデメリットとして、設置コスト、運用コストが非常に高額になりますので、すべての患者様に対して一様に使うのはまだまだ難しいかもしれません。

ですが、タイムラプスの機能を用いた胚の観察に関しての論文も、続々と発表されています。良質な胚を選択することができるこの技術は、今後さらなる妊娠率の向上に寄与することでしょう。

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