2022
09.13

凍結卵子、精子、胚を運ぶ専門の会社(クライオポート社)について~中田さんインタビュー

インタビュー, 胚培養士インタビュー

先日、第40回日本受精着床学会学術総会に参加した際に、企業ブースコーナーで友人と話していたら、胚培養士の中田久美子さんが声を掛けてきてくれました。今はクリニックで勤務しているのではなく、アメリカの凍結卵子、精子、胚を運ぶ専門の会社に勤務しているとのこと。

そして、学会場で展示ブースを出しているとのことで、上司のジョンさんをご紹介頂きました。ジョンさんはアメリカからコロナ禍でチェックの厳しい日本にわざわざ来て、熱い説明をしてくれました。

英語での会話なので齟齬が合ってはいけないということで、改めて中田さんに説明を頂く時間を頂戴し、事業の解説をして頂きました。

ぜひご覧くださいね。

会社の概要を教えてください

Cryoportは、世界中に現在まで55万件以上、IVFに関してはヨーロッパ、アメリカ、アジアで年間5千件の輸送を行っています。

日本についてはまだまだこれからですが、既に10施設ほど利用していただいています。中国など規制がある国では難しい側面がありますが、様々な取り組みを通じて、安全に凍結卵子や精子、胚をお届けすることができる会社だと思います。

弊社の特徴的な点は、輸送時に損害賠償保険がつけられることです。保険の費用は患者さん自身の負担になりますので、最終的に保険をつけるかどうかは患者さんの判断になりますが、保険があることでより安全に卵子を送ることができるようになります。

中田さんがこの会社に入社したきっかけを教えてください。

獨協医科大学の岡田教授のもとでは、精子バンクの立ち上げに関わっていました。そのとき、様々な企業との繋がりができたのですが、その中の一つがCryoport社でした。私自身、培養士でもあり臍帯血などにも関わってきましたので、そういった面が評価されたのかもしれませんね。今後は、同じ水を飲んだ培養士の方々と話をしていきながら進めていきたいと思っています。

凍結卵子、精子、胚の海外への輸送に関しては、これまで税関で止まってしまったり、液体窒素が不足していたりと、様々なトラブルに遭遇することがありました。国内でも、輸送中の事故が頻発しています。そうなると、患者さんの凍結した貴重な卵子、精子、胚がダメージを受けることになります。患者さんだけでなく、病院や胚培養士も困ってしまいますので、そのようなトラブルを少しでも回避したいとの思いで入社することに決めました。

弊社では、私がアジア圏のIVF部門を担当しています。その他には、部門がいくつかありますので、HPをご覧ください。

 

 

ラボから企業に入ってどのようにお感じになられていますか?

ラボでの仕事、研究も楽しかったですが、現在、今後、必要とされる部分を大事に考えています。

それは、培養士のところに凍結卵子、精子、胚が届いたものの、破損してしまっている状態を防ぐことです。仮に、そのようなことがあった場合、培養士が患者さんに伝えることはとても辛いことです。そうならないために、安全な輸送を選択していただきたいですね。

弊社は、ISOを取得するなど、システムもしっかりとしていますし、凍結タンクも綺麗にして安心安全な環境を整えるよう努力しています。海外への輸送の場合、インボイスなどの書類も弊社で準備しますので、病院の皆様が時間を費やすことはありません。また、GPSで追跡することもできますので、日本で治療を望む海外在住者の支援も行うこともできます。

 

この会社の得意技というか、他の会社にない差別化ポイントを教えてください。

何と言っても、洗浄性とGPSと保険制度の3つはトップレベルです。その他、安全な輸送を確保するための「リスク軽減」にも配慮が必要だと考えます。

 

 

日本でマーケティングを開始したのはいつぐらいですか?

2年くらい前ですね。それまでは日本に拠点がなく、IVFについて詳しい人がいなかったのですが、私が入社したことを機に、不妊治療についても積極的に進出することができると思っています。

 

今後、日本においてどのような展開をしていこうと思われていますか?

不妊治療の分野において、患者さんが安全に凍結卵子、精子、胚を送れるような仕組みを整えることが第一ですね。そうして、赤ちゃんが生まれることはもちろんですが、病院も培養士も苦労しない形で治療に携わることができたら良いと考えています。

弊社の輸送システムでは、届いた入れ物(ドライシッパー)に凍結卵子、精子、胚をつめていただければ済むように簡便化していますので、あらゆる手間を省くことができます。また、海外へ送る際にも税関で止まることがないので、安心です。

費用面については、国内輸送の場合は8万円~12万5000円になります。アメリカから日本へ輸送する場合は、距離にもよりますが、30〜40万円ほどになるかと思います。

 

国内での輸送コストを5〜10万円程度に抑えることができれば、患者さんも手が届きやすいと思いますがいかがですか。

海外にある本社とも相談をしていますが、現状としては難しいところがあります。なぜならば、安全な輸送のためのGPS、洗浄、メンテナンス、液体窒素の充填、書類作成など細部にわたって努力しているからです。とは言え、100施設以上での導入を目指し、多くの患者さんに利用していただきたいので、費用面についてもこれから検討していきたいですね。

また、私自身は国内だけの担当ではなく、アジア圏も担当していますので、そちらでも積極的に使っていただけるような活動をしていきたいと思っています。

 

 

まとめ

お話を聞くまでは「凍結卵子、精子、胚の輸送にそんなニーズがあるのか?」と思っておりましたが、言われてみればもっともなことも多く、必要なサービスだなと感じました。

今では生殖医療だけではなく、再生医療に活用する細胞などの輸送も手掛けておられるということで、今後の医療において必要なものだと理解致しました。

まだ、少し値段が高いですが、どんどん数が多くなってくればそれも徐々に下がって来てくれるのかなと期待したいところです。

 

<関連サイト>

Cryoport

https://www.cryoport.com/

 

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